連帯貢献金と育成保証金について解説。
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サッカー選手が移籍をするときには、育成クラブが手に入れることができる連帯貢献金とトレーニング費用(育成保障金)という制度があることで、育成クラブは選手を育てることにインセンティブがはたらくことになります。サッカー界独自のルールとなっています。
連帯貢献金とは、サッカーのプロ選手が所属クラブとの契約年数が残っている期間に移籍する場合において、一定の金額が支払われるものです。つまり移籍金が発生する場合にその一部が連帯貢献金として含まれなければならないということです。
連帯貢献金の支払われる条件としては、所属元クラブに支払われる移籍金の5%を連帯貢献金とします。この金額が、選手の育成した12歳から23歳の誕生日を迎えるシーズンまでに登録されていた所属クラブに支払われます。この具体的な金額は、クラブに所属していた年数によって決まります。
連帯貢献金の登録年数の分配金の算出方法は、2つに分かれています。
【12歳~15歳の所属】
移籍金の0.25%×在籍年数分(最大4年)=最大で1%
【16歳~23歳での所属】
移籍金の0.5%×在籍年数分(最大8年)=最大で4%
最長の在籍で移籍金全体のトータル5%が育成クラブに支払われるので、12歳から23歳まで同じクラブに所属していた場合は移籍金の5%が分配されることとなります。
所属クラブが複数ある場合は所属年数に応じて各クラブに分配されます。
2010年に連帯貢献金が移籍のときに発生するFIFAルールが日本でも適用されました。Jリーグから海外のクラブに移籍をした場合に適応されますが、国内移籍での移籍金には連帯貢献金は発生しません。そのため連帯貢献金が欲しければ海外で通用する選手を育てる必要があります。
また、育成年代で所属したチームが公立の中高校だった場合は、受け取りを拒否するケースも多いです。
JクラブからJクラブでの移籍など国内での移籍では発生しないというのはポイントですね。海外移籍時にこの話題を思い出すのが良いでしょう。
2015年夏に岡崎慎司選手がマインツからレスターへ移籍したときの移籍金は13億2000万円。移籍金総額が約13億円とするとその5%の6,500万円が連帯貢献金となり分配の比率は以下の通りです。
12〜15歳 宝塚JrFC 0.25% 4年 1,300万円
16〜18歳 滝川二高 0.5% 3年 1,950万円
19歳〜23歳 清水エスパルス 0.5% 5年 3,250万円
地域のサッカークラブや高校サッカー部に1000万円以上の資金が入ってくることは、クラブを運営する上では非常に大きな金額が支払われることとなります。
2021年9月に、アーセナルに移籍した冨安選手も例に挙げてみましょう。冨安選手は、イタリアセリエAのボローニャから、アーセナルに完全移籍をしました。
冨安選手の育成元クラブは12歳~15歳まではアビスパ福岡U-15、16歳~23歳までは、アビスパ福岡U-18であり、そのままトップに昇格していますので、アビスパ福岡が移籍金の5%(約1億5,000万円)を獲得したことになります。分配表は以下の通りです。
12-15歳 福岡U15 0.25% 4年 3000万
16-18歳 福岡U18 0.5% 3年 4500万
19-23歳 福岡 0.5% 5年 7500万
育成年代で所属したチームが公立の中高校だった場合は、受け取りを拒否するケースも多いようです。
トレーニング費用(育成保証金)とは、移籍金が発生しなくても育成クラブにお金が支払われる制度で、FIFAが定めた国際的なルールとなります。
※別名:海外ではトレーニングコンペンセーション
トレーニング費用とは、23歳以下の選手が移籍する場合に移籍先から支払われるお金で、12歳~21歳までの間に所属したチームの在籍年数に応じて支払われます。
FIFAの規定では、国別にカテゴリーに分けて支払額が規定されています。
強豪リーグほど高くなっていて、獲得クラブの大陸連盟ごとに設定されたⅠ~Ⅳの4レベルのカテゴリーごとに金額が設定されています。最も高いUEFAのカテゴリーⅠの場合以下の通りです。
【カテゴリーⅠ】
9万ユーロ/年間×在籍年数
※日本円では1000万円ほど
※在籍年数:12歳~21歳まで
※12歳〜15歳は、カテゴリーⅣの扱いにて150万円ほど
カテゴリー1に移籍した場合は、最大で、150万円×4年間+1000万円×5年間で総額5600万円程のトレーニング費用が発生します。
Jリーグのクラブ間での移籍の場合に発生するトレーニング費用について。
【国内移籍のJ1への移籍の場合】
年間100万円×12歳〜15歳×在籍年数=最大で4年
年間800万円×15歳〜21歳×在籍年数=最大で5年
最高で800万円×5年+100万円×4年となるので4400万円のトレーニング費用が発生します。
【国内移籍のJ2への移籍の場合】
年間100万円×12歳〜15歳×在籍年数=最大で4年
年間400万円×15歳〜21歳×在籍年数=最大で5年
最高で2400万円のトレーニング費用が発生します。
連帯貢献金は国内移籍では発生しなかったですが23歳以下の選手の国内移籍では育成保証金は発生するということですね。
国内で大学生からJリーグクラブへ移籍した場合に支払われる金額
所属大学/卒業高校/卒業中学校/卒業小学校
J1リーグへの移籍の場合 120万円 /45万円/30万円/10万円
J2リーグへの移籍の場合 80万円/30万円/15万円/5万円
J3リーグ、JFLへの移籍の場合 20万円/15万円/なし/なし
国内で高校生からJリーグクラブへ移籍した場合に支払われる金額
卒業高校/卒業中学校/卒業小学校
J1リーグへの移籍の場合 90万円/30万円/10万円
J2リーグへの移籍の場合 60万円/15万円/5万円
J3リーグ、JFLへの移籍の場合 15万円/ なし/なし
2010年にセレッソ大阪からドルトムントへ香川真司選手が移籍したときには移籍金が発生しない0円移籍でした。ただ当時21歳の香川真司選手の移籍にはトレーニング費用が発生しました。
そのため4年間在籍したセレッソ大阪は4000万円のトレーニング費用を得ています。
連帯貢献金とトレーニング費用はともにFIFAが定める国際ルールとなっていて、選手の国を越えた青田刈りに対して、育成したチームを金銭的に保護するという狙いがあります。
この制度によって選手を育てても金銭的に一切報われずに引き抜かれることが無くなり一定金額がクラブに還元されることとなります。
なぜクラブの育成組織を強化すべきか?というとこのような制度の存在も後押ししているのが見えてきました。
Jリーグの下部組織から選手を昇格させる場合はトレーニング費用無しで優先的に獲得でき、23歳までは移籍してもトレーニング費用が発生します。将来、海外のビッグクラブに移籍した場合は連帯貢献金が億単位で期待できることから、各クラブは金銭的なメリットが大きいので下部組織で選手を育成することに力を入れています。